「公害苦情と法規制」
1. 公苦苦情の現状
目 次
1 公苦苦情の現状
2 公害と地球環境問題
3 公害法令の規制
4 行政指導
5 廃棄物処理法の行政処分と罰則
2. 公害と地球環境問題
大気環境の保全
○ 大気汚染を守る法律・・・大気汚染防止法
○ 大気汚染の原因・・・工場事業場・自動車など
○ 環境基準‥・健康を保護する上で維持することが望ましい基準(S02、N02、CO、SPM、OXの5物質とベンゼンなどの有害大気汚染物質)
行政が施策を講じる上で目標(指標)となるもの
環境基準が達成されなかったときには、
環境基準が達成されるよう各種の施策を講じ、達成を目指す
3. 公害法令の規制
公害法令の規制
○ばい煙発生施設:
①ボイラー(発電所、大規模暖房など) ②溶鉱炉 ③廃棄物焼却炉等
○粉じん発生施設:④破砕機 ⑤ベルトコンベア ⑥土砂堆積場等
★一定以上の大きさ(能力)により届出必要。
★ばい煙濃度規制(煙突から出る煙の濃度)
☆使用燃料規制(燃料中のいおう酸化物)
☆施設設の使用・管理の規制(粉じん発生施設)
4. 行政指導
水・地下水環境の保全
○水質汚濁、地下水汚染を守る法律‥・水質
汚濁防止法、土壌汚染対策法
○水質汚濁の原因‥一工場事業場・家畜農家・生活排水など
○環境基準‥・健康を保護する上で維持する
ことが望ましい基準
(有害物質項目、生活環境項目など)
騒音(振動)環境の保全
○騒音とは‥・好ましくない音(振動)
例)自動車音、工場音、建設工事音、ピアノの練習音、エアコン等々
○騒音の規制法‥・騒音規制法、振動規制法
○環境基準‥・健康を保護する上で維持することが望ましい基準(夜と昼では感覚的に異なる。)
(環境基準があるのは」騒音だけで、振動にはない)
悪臭環境の保全(2)
▽悪臭の規制法・・・悪臭規制法
▽環境基準・・・ありません。
▽苦情件数・・・約1000件(愛知県)
○感覚公害である。
○業種別件数は、「その他」が半分以上
○防止方法は難しい
5 廃棄物処理法の行政処分と罰則
・ エ場操業に当たっては、周辺住民への環境配慮は
欠かせません。
・ 環境関係法令を遵守し、情報開示に備えることが重
要です。
・ 知らぬ間の違反が大きな事業リスクになります。
・ 安易に自己判断せず、専門家等に相談を!
坂部環境技術事務所 大矢 伸也
2.嶋矢 志郎 様 ジャーナリスト・学者・著述業
「21世紀の新潮流/エコからエシカルへ
-エシカルライフのすすめ- 」
21世紀の新潮流/エコからエシカルへ
―エシカルライフのすすめ―
2016/11/24
嶋矢 志郎 氏
はじめに―3・11が示唆した教訓―
2011年3月11日(3.11)から、すでに5年半。眼前に広がる悲惨な痕跡は、今なお痛恨の極みであるが、私たち人間が目を醒まして、世直しへ出直すための絶好の契機を突きつけてくれたと考えれば、3.11はむしろピンチをチャンスに変えて、未来へ生かしていく試練と受け止めたい。
確かに、1千年に1度来るか来ないかの未曾有の天災ではあったが、単純な天災ではない。
人災の余地は、なぜ生じたのか。それは偏に次の3点にある。
1つは、地球環境に対する私たち人間の不遜であり、思い上がりである。地球環境が健全であって初めて私たち人間のいのちがあり、暮らしがあり、社会の営みがある。
この紛れもない地球環境と私たち人間の主客関係を取り違えて、主客転倒の人間中心主義に陥ってきた点にある。
2つは、地球環境に対する私たち人間の驕りである。地球環境の営みの原理、原則である自然の摂理とそのエネルギーと破壊力を侮り、蔑ろにして、事前の備えを疎かにしてきた点にある。
3つは、地球環境に対する私たち人間の慢心である。未熟な科学技術への安易な過信と安全、安心へ万全を期しての対策を事前に打つ、いわばフェールセーフ(FaiI-safe:失敗への安全対策)を怠ってきた点にある。
1.今、なぜ「エシカルライフのすすめ」か
参考資料:1124配布用01
嶋矢志郎様 環境新聞社『「買う」から始めるエシカル(仮題)』向け.pdf
(1)エシカルとは、何か
エシカルとは、英語 ethic[名詞:倫理/道徳]の形容詞 ethical[倫理的な/道徳上の/(社会規範に照らして)正しい]であるが、私流には「エシカルとは、良心に問うもの」であって、[良心的な/良心に誠実な/良心に恥じない]などと、意訳している。
直訳の[倫理/道徳]では、初めに第 3 者からの規範ありきで、客観、他律的で、自発性に欠けている。その点、意訳の[良心]であれば、初めに自らの良心に問うセルフ・チェックありきで、主観、自律的で、自発性に富んでいる。
(2)危機への備え
世界自然保護基金(WWF)が隔年でまとめている「生きている地球レポート(LPR: Living Planet Report)は、地球環境が生態系サービスをはじめ、自然資源などを生産し、再生する供給力と私たち人間がその天与の恵みを消費する需給ギャップから、地球社会の将来に亘る持続可能な発展性の可能性とともに、その限界を暗示している。
(3)「エコからエシカルへ」文明のシフトを
自然の摂理をはじめ、地球環境の道理の下で、地球環境があっての天地であり、人の営みであればこそ、私たち人間が最優先すべき倫理的な命題は、自ずと地球環境の保全であり、人間本位の物質文明から地球環境本位の共生文明へ、文明シフトを急ぐことであることは言うまでもない。
2.地球環境(地球・自然・環境の総称)の可能性と限界
(1)LPI(生きている地球指数)/ ※一部、数字を修正
EFP( 地球への負荷の足跡)/EOS(過剰消費・過剰負荷)
最新の同「レポート 2012」によると、LPI(Living Planet Index:生きている地球指数)は 1970 年から 2008 年に亘る 38 年間で 52%、なかでも熱帯地域では 51%も、それぞれ減少、低下している。地球環境が生産し、再生する供給力が劣化して、回復力が弱ってきている証拠である。人間の営みによる需要が一貫して供給力を上回り、過剰消費の傾向を強めているからである。
この過剰傾向を地球の個数倍で示した EFP(Ecological Foot-print:地球への負荷の足跡)は、1966 年以降の 40 年余の間にほぼ倍増して、地球の 1.5 個倍に達している。これは、私たち人間が 1 年間で消費する生態系サービスや自然資源を地球環境が生産し、再生するのに 1 年間では賄い切れず、1.5 年も要することを意味している。EFP が供給力を上回る EOS(Ecological Over-shoot:過剰消費/過剰負荷)が慢性化して、利子だけでは暮らせず、元本を食い潰していることを如実に示している。
国別の消費水準比較・EFP *地球1個に対し
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日 本 ・・・・2.5個
アメリカ ・・・・4.5個
(2)地球環境を蔑ろにしてきた3つの歴史的な経緯
参考資料:1124配布用02 エシカルライフのすすめ ―21世紀は「良心の世紀」―(161124).pdf
77ページ 3.地球環境軽視の3つの不幸
1つには、一神崇拝の正典である「|日約聖書」の「創世記」に由来する神の教えとその影響が大であり、原点である。
2つには、中世以降の近代科学への新潮流が対峙型自然観の下での人間中心主義を支え、勢いづかせてきた影響も無視できない。
3つには、経済学が自然の価値を軽視したまま、今日に及んでいる致命的な影響である。
(3)古代4大文明と日本の文化・文明の比較
参考資料:1124配布用03〈第五回〉3・11が促す文明シフト~
古代四大文明は、なぜ
栄えて、滅んでいったのか。そこには、共通している教訓がある。地球と自然と環境が健全であることが時空を超えて人間社会の基本的な生存基盤であり、自然の恵みの源泉である緑と土と水がより豊かで、瑞々しく保全されていることが文化/文明の開花とその持続可能性を保証することを、今に伝えている。
古代四大文明の発祥地は、いずれも豊穣な森林地帯を背に、大河の流域で農耕、牧畜を拡げ、数千年にも亘る古代文明の栄華を極めたが、やがて黄昏(たそがれ)て、滅んでいったことは、歴史が証明している
その点、曰本はどうであったか。温暖多湿の気候風土が幸いして、天の利と地の利を得てきたことが大きいが、それ以上に人の利に恵まれて、その英知が曰本の文化/文明の灯を絶やすことなく、栄え続けて、今曰に及んでいることは特筆すべき奇跡である。
3.エシカルライフへの3つの指針
参考資料:1124配布用01
嶋矢志郎様 環境新聞社『「買う」から始めるエシカル(仮題)』向け.pdf
(1)エコ認識を、「浅いエコ」から「深いエコ」へ
第 1 の指針は、生態系に対するエコ認識を人間本位の「浅いエコ」から地球環境本位の「深いエコ」へ、切り替えていくことである。
(2)自然観を、自然と融合、敬い、共生型へ
第 2 の指針は、自然に対する価値観、つまり自然観を、物質本位の対峙型からエネルギー本位の融合型へ、切り替えていくことである。物質本位の対峙型の自然は、英語の名詞 nature を翻訳した、いわば物質としての自然(しぜん)であるが、エネルギー本位の融合型の自然は、日本古来の「自ら然る自然(じねん)」であって、天地創造の「造化のエネルギー」を意味している。
(3)文明の作法を、「良心の世紀」型へ
第 3 の指針は、「深いエコ」認識とエネルギー本位の調和型自然観の下で、多岐に亘る文明の作法を「開発の世紀」といわれた 20 世紀型から脱して、共生文明社会の構築、実現を目指す 21 世紀型へ、切り替えていくことである。
おわりに―何のためのエシカルか―
参考資料:1124配布用02 エシカルライフのすすめ ―21世紀は「良心の世紀」―(161124).pdf
79ページ 6.おわりに
ところで、何のためのエシカルか。それは、次の3点である。
1つは、地球の健康を保全するためである。
2つは、私たち人間の心身の健康を保全するためである。
3つは、社会の健全化、公序良俗を保全するためである。
ロシアの文豪で、思想家でもあったL.N.トルストイ(1828 - 1910)は、次の至言を遺している。
他人の不幸の上に自分の幸福を築いてはならいない。
他人の幸福の中にこそ、自分の幸福もある。
トルストイの死後、約100年。私たち先進国の人たちがこの1世紀の間に、よかれと崇めてきた文明とその作法は自らの欲望の向くまま、無邪気に「豊かな社会」の甘い果実を貪っていくうちに、その陰でどれだけの不幸な貧困や飢餓を広げてきたことか。この地球上で、ひと握り
の人たちがひと握りの幸せを手にするために、遥かにより多くの人たちが人間的な悲惨を思い知らされてきたことを忘れてはならない。
「エコからエシカルヘ エシカルライフのすすめ」が目指して、切り拓いていく地平は、良心が生命線である。
CRN研究会では環境に関する取り組みとテーマは色々とありました。
今回のような [良心的な/良心に誠実な/良心に恥じない] などと、人間本位の物質文明から地球環境本位の共生文明へ、文明シフトを急ぐことであること。古代四大文明の発祥地は、いずれも豊穣な森林地帯を背に、大河の流滅で農耕、牧畜を拡げ、数千年にも亘る古代文明の栄華を極めたが、やがて黄昏(たそがれ)て、滅んでいった。
日本の古い時代から山里や海に住む人たちは、自然の成長量だけをいただく持続可能な暮らしでした。昭和の時代は、高度成長時代になり全てが石油に依存してきました。
そして、日本は栄え続けて、今曰に及んでいることは特筆すべき奇跡の価値観であり、たかが数百年の我々の時代で破壊してはならない重大な危機感が必要であると自負しました。今後さらに、嶋矢志郎先生にご講演をしていただく機会を期待しております。
(事務局 川崎)
嶋矢志郎プロフィール
ジャーナリスト/コラムニスト/学者。
早稲田大学政経学部卒業後、日本経済新聞社(記者職)入社。論説副主幹/論説委員を最後に、
1994年から大学教授に転じ、広島市立大学国際学部/大学院国際学研究科教授兼教学部長、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授等を歴任。
この間、1990年から筑波大学社会工学系で特任科目『環境と文明』を担当するなど、10有余の大学/大学院で非常勤講師を併任。
テレビ東京のニュースキャスター、ラジオ日経のパーソナリティーなどにもレギュラー出演。学校法人桐朋学園理事/評議員を25年間に亘り務める。
専門領域は日本経済論、地球社会論、現代文明論、情報社会論、環境共生論など。著書・論文多数。公益社団法人日本記者クラブ個人会員。
二次会は、質問時間が取れなかった分多くの話題と熱気でした。
ごきげんよう